インターネットを介して個人輸入した海外製経口妊娠中絶薬による健康被害
医療機関を受診せずに個人で海外製経口妊娠中絶薬を使用することは大変危険です。
1.概要
インターネットを介してインド製と表示された経口妊娠中絶薬を個人輸入し、服用した20歳代の女性(妊婦)において、多量の出血やけいれん、腹痛の症状が生じ、医療機関に入院した事例が報告されました。現在、女性は医療機関での処置により軽快し、退院しています。
女性が服用した経口妊娠中絶薬は、ミフェプリストンとミソプロストールを有効成分とすると表示されていました。これらの医薬品は、膣からの多量の出血や重大な細菌感染症などを引き起こすおそれが明らかになっており、医師からの指示を受けずに使用することは大変危険です。
厚生労働省は、このような医薬品を安易に個人輸入して使用することがないよう注意喚起しているところですが、今回の事例の発生を受け、改めて注意喚起します。
また、経口妊娠中絶薬については、個別に指定し、医師の処方に基づくことが地方厚生局で確認できた場合を除き、個人輸入を制限することとしていますが、このインド製の経口妊娠中絶薬についても同様の取扱とすることとし、個人輸入の制限のための指定を行いました。
2.製品名等(報告された製品の包装の写真(別紙)に基づく)
名 称:「Miso-Kare Misoprostol Tablets IP 200 mcg」
形 状:銀色のブリスターパックに封入された錠剤
製造国:インド
名 称:「A-Kare Combipack of Mifepristone Tablets IP & Misoprostol Tablets IP」
形 状:銀色のブリスターパックに封入された錠剤
製造国:インド
3.健康被害の内容
- 平成30年4月に、国内の20歳代の女性(妊婦)1名がインターネットを介した個人輸入により上記の製品を購入して服用したところ、多量の出血やけいれん、腹痛を生じ、宮城県仙台市内の医療機関に入院しました。
- 現在までに、女性は医療機関での処置により軽快し、退院しています。
4.厚生労働省の対応
- 厚生労働省は、経口妊娠中絶薬を安易に個人輸入して使用することがないよう、注意喚起を行っており、平成16年からは、ミフェプリストンを含有する経口妊娠中絶薬のうち、米国、EU、中国、台湾で販売されているものを指定し、医師の処方に基づくことが地方厚生局で確認できた場合を除き、個人輸入を制限する措置を採っています。
- 厚生労働省は、改めて、経口妊娠中絶薬を安易に個人輸入して使用することがないよう、注意喚起を行うとともに、インドで製造されている製品についても、同様に個人輸入を制限するための指定を行いました。
5.参考
- 平成16年10月厚生労働省発表「個人輸入される経口妊娠中絶薬(いわゆる経口中絶薬)について」
- 医師の指示や処方せん等がない場合には個人輸入することができない医薬品等のリスト
出典元:厚生労働省
個人輸入される経口妊娠中絶薬(いわゆる経口中絶薬)について
国内では承認されていない経口妊娠中絶薬は、ときに手術が必要となる出血を起こすことが知られており、欧米でも医師の処方と経過観察が必要とされる医薬品であるため、安易に個人輸入され、使用されることによる健康被害が懸念されます。
そのため、医療機関を受診しないで個人で使用することの危険性を厚生労働省のホームページや報道機関を通じて呼びかけるとともに、個人で輸入して安易に使用されないよう、以下の措置を行うこととしましたので、お知らせします。
1.厚生労働省のホームページの掲載による注意喚起等
- 医療機関を受診せずに経口妊娠中絶薬を安易に服用することは危険ですので避けていただくよう、厚生労働省のホームページにQ&Aを掲載して、広く呼びかけることとしました。
- 健康被害の実態を把握して、注意喚起の対応を進めるために、(社)日本医師会等の関係団体あてに協力を依頼しました。
2.個人輸入代行業者に対する監視指導の強化
- 各都道府県に対し、個人輸入代行業者のインターネット上の広告等について、監視指導の徹底を依頼
- インターネットで広告を行っている個人輸入代行業者やプロバイダに対して警告メールの送付を行い監視指導の強化を図りました。
3.個人輸入に対する制限
経口妊娠中絶薬については、これまでは少量であれば厚生労働省での手続きが無くても個人で輸入できていた取扱いを改め、原則として、医師の処方に基づくことが地方厚生局で確認できた場合に限って輸入が可能となるよう、個人輸入を制限することとしました。
(参考)個人輸入を制限し、注意を喚起する経口妊娠中絶薬の商品名等
(米国) ミフェプレックス(Mifeprex)
(中国) 息隠(米非司酉同片)
(台湾) 保諾(Apano)(平成20年5月追加)
開発時の名称である「RU486」とも呼ばれています。
経口妊娠中絶薬「RU486」又は「ミフェプリストン錠」に関するQ&A
- 経口妊娠中絶薬といわれている「RU486」あるいは「ミフェプリストン(mifepri- stone)」とはどのような医薬品ですか。日本では認められていますか。
- 「RU486」又は「ミフェプリストン錠」は妊娠が継続するために必要なプロゲステロンと呼ばれるホルモンの作用を止める妊娠中絶薬です。
我が国では未承認の医薬品であり、譲渡・販売等は薬事法で禁止されています。 有効成分の「ミフェプリストン」は、子宮収縮作用のある他の医薬品と一緒に使用した時、妊娠後(最後の月経が始まった日から)49日以内であれば妊娠を終了することができるものとして欧米では認可され、医師が使用して経過を観察することが必要とされています。 - 「ミフェプリストン」は欧米ではどのように規制されていますか。個人で輸入してもいいのですか。
- 欧米では、医師のみが処方できる医薬品とされています。腟からの出血や重大な感染症等の可能性が知 られており、医師による投与後の経過観察や、緊急時には医療機関を受診できることが必要とされています。欧米でも医師の処方せんなしに薬局で購入することはできません。また、インターネットを通じて販売されることは認められていません。
また、本剤は、卵管妊娠(子宮外妊娠)には効果がなく、それに気付かずに適切な処置がなされなければ卵管破裂の危険があることから、米国では医療機関に対する注意喚起がなされています。
このようなことから、インターネット上の個人輸入代行会社を通して本剤を入手し、個人で使用することは危険なので、やめてください。 - 外国で「ミフェプリストンを服用してはいけない」とされているのは、どの様な場合ですか。
- 最後の月経が始まった日から49日を超えた場合は、この医薬品の適応の対象となっていません。
また、次の方は服用してはいけないこととされています。- 卵管妊娠(子宮外妊娠)
- 子宮内避妊具(IUD)使用者
- 副腎に障害のある方
- ステロイド薬物治療を受けている方
- 異常出血のある方、抗凝血剤を使用している方
- ミフェプリストン、ミソプロストールあるいは同様の薬に対してアレルギー反応を持っている方
- 「ミフェプリストン」によって起こる可能性のある副作用や健康被害は何ですか。
- 外国の添付文書によれば、ミフェプリストンを服用すると、腟からの出血を引き起こす可能性があります。時には、腟からの出血が非常に重くなることがあり、場合によっては外科的な処置により止血する必要があります。
また、2004年11月に、米国では添付文書の警告欄に、敗血症等の重大な細菌感染症や子宮外妊娠患者への投与による卵管破裂が追加されました。
他の副作用としては、下痢、吐き気、頭痛、めまい、腰背痛等が知られています。
(参考)個人輸入を制限し、注意を喚起する経口妊娠中絶薬の商品名等
(米国) ミフェプレックス(Mifeprex)
(中国) 息隠(米非司酉同片)
(台湾) 保諾(Apano)(平成20年5月追加)
開発時の名称である「RU486」とも呼ばれています。