向精神薬
向精神薬は、その乱用の危険性と治療上の有用性により、第1種向精神薬、第2種向精神薬、 第3種向精神薬の3種類に分類されています。第1種向精神薬にはメチルフェニデートなど、 第2種向精神薬にはフルニトラゼパム、ペンタゾシンなど、第3種向精神薬にはトリアゾラム、 ブロチゾラムなどが指定されています。
中枢神経に作用する覚せい剤・麻薬・大麻等以外の精神に影響する薬物であり、医薬品としては、睡眠薬、抗うつ薬、精神安定剤、抗不安薬などとなっています。服用するためには医師の処方箋が必要です。
1)睡眠薬
最近では睡眠導入剤とも言われます。文字通り睡眠を促す薬で、不眠状態や睡眠が必要な状態に使われる薬の総称です。
その構造によって、ベンゾジアゼピン系、シクロピロロン系、バルビツール酸系、チエノジアゼピン系、や抗ヒスタミン薬などに分類されます。また、作用時間によっても超短時間型、短時間型、中間型、長時間型に分類されます。
以前はバルビツール酸系の薬剤が主に用いられていましたが、依存しやすいという問題などから現在は比較的安全なベンゾジアゼピン系が多く使われています。ベンゾジアゼピン系は、脳の興奮を抑制するギャバという神経伝達物質の働きを強めるため、催眠作用があると考えられています。
使用には、疾患を併せ持つ場合や他の薬剤との併用などは副作用などの恐れもあるため、医師の診断が必要です。また、最近の睡眠薬は安全性が高くなりましたが、突然中止すると症状が悪化する場合もあります。
2)抗うつ薬
うつ病治療の基本薬で、現在は副作用の少なさを考え、SSRIやSNRIが主に使われています。
抗うつ薬は、脳の中のセロトニンやノルアドレナリンといった物質に対する働きを持ち、治療薬としてうつ病に主として使われますが、パニック障害などにも治療効果を持っています。抗うつ薬には様々な種類があり、昔は三環系抗うつ薬と呼ばれるタイプが主でした。しかし、「口がかわく、便秘、尿が出づらい、目がかすむ、ふらつく、眠気がする」といった副作用が強いので、最近はSSRIやSNRIといった副作用の少ない抗うつ薬が主流になっています。少なくなったとは言え、SSRIでは吐き気、SNRIでは尿閉といった副作用が起こる場合があります。
抗うつ薬は、のみ始めてすぐには効果が現れず、しばらく服用を続けていると徐々に効果が現れるという特徴があります。一方、副作用は、一般にのみ始めから現れ、やがて治まっていきます。のみはじめは、「効かないのに、副作用ばかり出る」といったことが起こりえます。薬に関する心配事がある時にはきちんと担当の医師に話して、どうするのがよいか相談しましょう。
また、例えば、糖尿病の患者さんが、「甘い物が好きだから、甘い物を食べながら治療を受けたい」と考え、生活習慣を変えずに糖尿病の薬を服用しても効果は期待できません。同じように、うつ病も過度のストレスがかかった状態のままでは、せっかく抗うつ薬をのみ始めても十分な効果は期待できません。治療効果がしっかり現れるには、これまで一人で抱えてきた負担をいったん軽くして、十分な心の休息をとることが大切です。
抗うつ薬には、悪くなった状態を良くする効果と、良くなった状態を維持する効果があります。この効果を利用して、初めてうつ病になった方で、職場などに復帰した後もおよそ半年間は薬の服用を続けていただくのが一般的です。すでに、うつ病の再発を何回か繰り返した患者さんや、まだ症状が残っている患者さん、重症のうつ病と診断された患者さんでは、1~3年にわたって治療を継続する場合があります。
抗うつ薬の維持療法をどのくらい続けるかについて、医師と十分に相談していただくことが重要です。
3)精神安定剤・抗不安薬
不安や緊張などを軽減、解消をする薬のこと。マイナートランキライザーとメジャートランキライザーの2種類があり、どちらも中枢神経に作用します。
マイナートランキライザーは抗不安薬とも言われ、主に神経症やうつ病、心身症などに利用されます。比較的軽度の不安の緩和や、気分を落ち着かせることができます。眠くなることが多いため、睡眠補助剤として使われる場合もあります。
メジャートランキライザーは抗精神病薬とも言われ、統合失調症やアルコール依存症などに用いられます。強い抗精神作用を持つ薬で、マイナートランキライザーでは対応できない、極度の不安などを取り除くことができます。急性の精神障害の治療や、その他にも幅広い精神疾患に使用されます。
一般的に精神安定剤という場合、多くがマイナートランキライザーを指しています。成分としては、日本では、大半がベンゾジアゼピン系とチエノジアゼピン系の薬です。しかし、ベンゾジアゼピン系は乱用すると依存症が現れる恐れがあるので、専門医の指示に適切に従う必要があります。
(出典 厚生労働省 e-ヘルスネット)
【参考】向精神薬一覧(平成24年1月現在)
物質名一覧表
物質名 | 薬理作用 | 物質名 | 薬理作用 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
第1種 | ジペプロール | 鎮咳 | 第3種 | テマゼパム | 中枢抑制 | ||
セコバルビタール | 中枢抑制 | ○ | デロラゼパム | 中枢抑制 | |||
フェネチリン | 中枢興奮 | トリアゾラム | 中枢抑制 | ○ | |||
フェンメトラジン | 中枢興奮 | ニトラゼパム | 中枢抑制 | ○ | |||
メクロカロン | 中枢抑制 | ニメタゼパム | 中枢抑制 | ○ | |||
メタカロン | 中枢抑制 | ノルダゼパム | 中枢抑制 | ||||
メチルフェニデート | 中枢興奮 | ○ | ハラゼパム | 中枢抑制 | |||
モダフィニル | 中枢興奮 | ○ | バルビタール | 中枢抑制 | ○ | ||
第2種 | アモバルビタール | 中枢抑制 | ○ | ハロキサゾラム | 中枢抑制 | ○ | |
カチン | 中枢興奮 | ピナゼパム | 中枢抑制 | ||||
グルテチミド | 中枢抑制 | ビニルビタール | 中枢抑制 | ||||
シクロバルビタール | 中枢抑制 | ピプラドロール | 中枢興奮 | ||||
ブタルビタール | 中枢抑制 | ピロバレロン | 中枢興奮 | ||||
ブプレノルフィン | 鎮痛 | ○ | フェノバルビタール | 中枢抑制 | ○ | ||
フルニトラゼパム | 中枢抑制 | ○ | フェンカンファミン | 中枢興奮 | |||
ペンタゾシン | 鎮痛 | ○ | フェンジメトラジン | 中枢興奮 | |||
ペントバルビタール | 中枢抑制 | ○ | フェンテルミン | 中枢興奮 | |||
第3種 | アミノレクス | 中枢興奮 | フェンプロポレクス | 中枢興奮 | |||
アルプラゾラム | 中枢抑制 | ○ | ブトバルビタール | 中枢抑制 | |||
アロバルビタール | 中枢抑制 | ○ | プラゼパム | 中枢抑制 | ○ | ||
アンフェプラモン | 鎮痛 | フルジアゼパム | 中枢抑制 | ○ | |||
エスクロルビノール | 中枢抑制 | フルラゼパム | 中枢抑制 | ○ | |||
エスタゾラム | 中枢抑制 | ○ | ブロチゾラム | 中枢抑制 | ○ | ||
エチナメート | 中枢抑制 | プロピルヘキセドリン | 中枢興奮 | ||||
エチランフェタミン | 中枢興奮 | ブロマゼパム | 中枢抑制 | ○ | |||
オキサゼパム | 中枢抑制 | ペモリン | 中枢興奮 | ○ | |||
オキサゾラム | 中枢抑制 | ○ | ベンツフェタミン | 中枢興奮 | |||
カマゼパム | 中枢抑制 | マジンドール | 食欲抑制 | ○ | |||
クアゼパム | 中枢抑制 | ○ | ミダゾラム | 中枢抑制 | ○ | ||
クロキサゾラム | 中枢抑制 | ○ | メソカルブ | 中枢興奮 | |||
クロチアゼパム | 中枢抑制 | ○ | メダゼパム | 中枢抑制 | ○ | ||
クロナゼパム | 抗てんかん | ○ | メチプリロン | 中枢抑制 | |||
クロバザム | 抗てんかん | ○ | メチルフェノバルビタール | 中枢抑制 | |||
クロラゼプ酸 | 中枢抑制 | ○ | メフェノレクス | 中枢興奮 | |||
クロルジアゼポキシド | 中枢抑制 | ○ | メプロバメート | 中枢抑制 | |||
ケタゾラム | 中枢抑制 | レフェタミン | 鎮痛 | ||||
ジアゼパム | 中枢抑制 | ○ | ロフラゼプ酸エチル | 中枢抑制 | ○ | ||
セクブタバルビタール | 中枢抑制 | ロプラゾラム | 中枢抑制 | ||||
ゾルピデム | 中枢抑制 | ○ | ロラゼパム | 中枢抑制 | ○ | ||
テトラゼパム | 中枢抑制 | ロルメタゼパム | 中枢抑制 | ○ |
- それぞれの物質の塩類及びそれらを含有するものを含む。
- ○印は、日本国内で医薬品として流通しているものを示す。
(出典 厚生労働省)
内服薬 一般名 |
商品名 |
静注・注射剤 一般名 |
商品名 |
|
---|---|---|---|---|
第一種向精神薬 | メチルフェニデート | リタリン | セコバルビタール | アイノナールNa注射用 |
コンサータ | ||||
モダフィニル | モディオダール | |||
内服薬 一般名 |
商品名 |
内服薬 一般名 |
商品名 |
|
第二種向精神薬 | アモバルビタール | イソミタール | ペンタゾシン | ソセゴン |
フルニトラゼパム | ロヒプノール | ペンタジン | ||
サイレース | ペルタゾン | |||
ビビットエース | ペントバルビタール | ラボナ | ||
フルトラース | ||||
フルニトラゼパム | ||||
外用薬 一般名 |
商品名 |
静注・注射剤 一般名 |
商品名 |
|
第二種向精神薬 | ブプレノルフィン | レペタン | フルニトラゼパム | ロヒプノール |
ザルバン | サイレース | |||
ノルスパン | ブプレノルフィン | レペタン | ||
ザルバン | ||||
ペンタゾシン | ソセゴン | |||
トスパリール | ||||
ペンタジン | ||||
内服薬 一般名 |
商品名 |
内服薬 一般名 |
商品名 |
|
第三種向精神薬 | アルプラゾラム | アゾリタン | エスタゾラム | エスタゾラム |
アルプラゾラム | ユーロジン | |||
カームダン | エチゾラム | デパス | ||
コンスタン | エチゾラム | |||
ソラナックス | オキサゾラム | セレナール | ||
メデポリン | ペルサール | |||
クアゼパム | ドラール | クロキサゾラム | セパゾン | |
クアゼパム | クロチアゼパム | イソクリン | ||
クロナゼパム | ランドセン | ナオリーゼ | ||
リボトリール | リーゼ | |||
クロバザム | マイスタン | リリフター | ||
クロラゼブ酸二K | メンドン | ジアゼパム | ジアゼパム | |
クロルジアゼポキシド | コンスーン | ジアバックス | ||
コントール | セエルカム | |||
バランス | セルシン | |||
ゾピクロン | アモバン | セレナミン | ||
ゾピクロン | パールキット | |||
ゾルビデム | マイスリー | ホリゾン | ||
ゾルビデム | リリバー | |||
トリアゾラム | アサシオン | ニトラゼパム | チスボン | |
アスコマーナ | ネルボン | |||
カムリトン | ネルロレン | |||
トリアゾラム | ノイクロニック | |||
トリアラム | ヒルスカミン | |||
ネスゲン | ベンザリン | |||
ハルシオン | ニトラゼパム | |||
ハルラック | バルビタール | バルビタール | ||
パルレオン | ハロキサゾラム | ソメリン | ||
ミンザイン | フェノバルビタール | フェノバール | ||
フェノバルビタール配合 | アストモリジン | フルジアゼパム | エリスパン | |
トランコロンP | フルラゼパム | ダルメート | ||
ベゲタミンA、B | ベノジール | |||
ヒダントールD、E、F | ブロチゾラム | アムネジン | ||
複合アレビアチン | グッドミン | |||
ブロマゼパム | セニラン | ゼストロミン | ||
レキソタン | ソレントミン | |||
ベモリン | ベタナミン | ネストローム | ||
マジンドール | サノレックス | ノクスタール | ||
メタゼパム | レスミット | プロゾーム | ||
パムネース | ブロチゾラム | |||
メタゼパム | ブロチゾラン | |||
ロフラゼ酸エチル | アズトレム | ブロメトン | ||
ジメトックス | レドルバー | |||
スカルナーゼ | レンデム | |||
メイラックス | レンドルミン | |||
メデタックス | ロンフルマン | |||
ロンラックス | ロラゼパム | アズロゲン | ||
ロルメタゼパム | エバミール | ユーバン | ||
ロラメット | ワイパックス | |||
外用薬 一般名 |
商品名 |
静注・注射剤 一般名 |
商品名 |
|
第三種向精神薬 | ジアゼパム | ダイアップ | ジアゼパム | セルシン |
フェノバルビタール | ルビアール | ホリゾン | ||
ワコビタール | フェノバルビタール | フェノバール | ||
ノーベルバール | ミダゾラム | ドルミカム | ||
ブロマゼパム | セニラン | ミタゾラム |